ヴィクロテのクリスちゃん2018/04/25 23:15

ヴィクロテのクリスちゃん、いつか「彼女の物語」を書こう。

と、Twitterのほうで書いたら、思いがけずリツイートといいねをもらえて、胸がいっぱいになりました。
ヴィクロテ、みんな覚えてるんだな。
私も覚えています。


私はキャラの人かストーリーの人かと問われたら、たぶん7:3くらいでキャラの人です。
出発点のひとつとして、「あの人の話を書いてみたい」と思います。
他にもアプローチはあるのですが、そう思えたら、そこが小説の出発点だったら書くのが割と楽です。


ヴィクロテのクリスちゃんというのは、
コバルトからの読者であるなら周知ですが、「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」の主人公、
ドレスメーカーのクリスティン・パレスのことです。
16歳の主人公で、親友とともにお店をやっていて、公爵家の御曹司に好かれる地味な女の子です。
地味だけどドレス作りの腕は抜群で、クリスのドレスを着たら恋がかなうなんていう噂がたち、彼女の店「薔薇色」には今日も、恋に悩む女の子がやってくる……・。
というのが、ヴィクロテ前半の物語でした。
主役はお客さんで、彼女は狂言回し。最初はそういう感じで始めたんです。


ヴィクロテは全部で29巻です。本編22巻、外伝7冊。
主役はクリス、サブヒロインが親友のパメラ。ヒーローが恋人のシャーリー。
お店のお客さんの他は、主に3人の一人称に近い三人称で書いてあります。


パメラとシャーリーは書くのが楽しかったです。
書けば書くほど人の美点も欠点もわかってきて。外伝を何本か書いて、それでもっとわかってくるという楽しい感じを何回も味わいました。
クリスはそれがなかった。
クリスが何を考えてるのか?なんでこの子はこういうことをするのか?
生い立ちがわりと複雑なんですが、彼女はそのことをどうとらえているのか?
忘れたふりをしてるのか、本当に忘れているのか?
彼女がどういう行動をするのかはわかるんだけど、どうも原理がわからん。
(わからんのはその他にももうひとりいる。リコって子なんですが。鏡に映ったクリスだと考えると、ちょっとぞっとする子です)


クリスの外伝を書いておくべきだったと思いました。主役で外伝っていうのもおかしな話ですが。
主役だけど、ヴィクロテはクリスの物語ではなかった。
パメラとシャーリーの物語ではあったと思います。
あとアントニー。勝手に育ちました。


書くべきなのは続編ではなくて、あのときのクリスの話です。
たぶんクリスは結婚して幸せになって、あれで16歳の彼女の物語はいったん終わると思うので。
クリスはめちゃくちゃシャーリーが好きなんだけど、たぶん、彼が自分と違うということがわかっている。
幸せになるということは、鈍くなることだということもわかっていて飛び込んだんだと思う。
物語で、クリスを理解する男がふたり出てきます。
ふたりとも破滅的な男。
クリスが破滅に向かわなかったのは、創り出すことができたことと、女だったから、生み出す性だったからかもしれません。
あのふたりは、クリスがどうすべきだと思っていたんだろうな。


ヴィクロテについてはいっぱい思うことがあります。
書かなかったことがたくさんある。終わってから6年くらい経っているのに、今でもときどき考えます。
今は無理ですが、いつか書きたいです。
同人誌になるかもしれません。Twitterでいいねが40くらいもらえているので、100冊くらいは刷っても大丈夫か?などと思っています。

それでも待つと言ってくれる人がいる。こんなに嬉しいことはありません。
ありがとうございます。
そのときまでに、小説のスキルを少しでもあげておきたいと思います。

コメント

_ 1969年のドンキホーテ ― 2018/05/05 23:31

ごぶさたしております。最近、やっと「森若さん2」と「嘘つき…」を入手しました。何かと煩わしい職場での人間関係に苦労しつつ、距離を近づけようとする太陽さんとのつきあい方に困惑する森若さんの思い、何だか目に浮かぶようです。私も、人付き合いが苦手で、人との距離の取り方にさんざん苦労し、その割にすぐに失言を吐いてしまうので、なおさらです。
同郷出身の青木さんの作品、もっと読んでいきたいです(たぶん一般小説の方になると思いますが)。

_ とこ ― 2018/05/09 22:13

こんにちは。

ずっと以前に何度かコメントさせていただいた覚えがあるんですが、その時の名前が思い出せないので、多分これだろうと思い、記名させていただいています。

「ヴィクロテの新作はもう書かれないのかな。」と時々書店に行くと思い出していたので、とてもうれしいです。
ぜひ書いてください!!

古い日付のコメントなんかを拝見していて、「ああ、そういえば発売日に書店の開店と同時に入って、棚に並ぶ前にゲットしようとウロウロしていたよなぁ。そんなにすぐ欲しいって思ったのはもうないなぁ。」って懐かしく思い出しました。

_ 祐子 ― 2018/05/10 10:31

1969年のドンキホーテさん、お久しぶりです!

さくらちゃんも読んでくださったのですね。ありがとうございます(^o^)

>人付き合いが苦手で、人との距離の取り方にさんざん苦労し、その割にすぐに失言を吐いてしまう

これわかります。私なんて今でもオロオロしてしています。このあたりの感じは森若さんで書いていますが、役にたつ機会があってよかったというかなんというか。
長野県のご出身なんですね。いろんなものを書いておりますが、読みたいものを読んでいただければ、大変嬉しいです!

_ 祐子 ― 2018/05/10 10:33

とこさん、こんにちは!

もう6年もたつのに、ヴィクロテを愛してくださってありがとうございます。涙です。
あれは私にとって特別な作品です。今でも小説のことでくじけることがあると、ヴィクロテに戻ります。いつまでも待ってくれるファンの方がいることも大変大きいです。
そんなふうに思えるシリーズを持っているのは、作家としてとても幸せなことです。

頑張ります。よろしくお願いいたします。

_ 佐原レンリ ― 2018/05/12 14:56

はじめてコメントをさせていただきます。

突然失礼いたします。
ヴィクロテシリーズがとても大好きで、「王子とワルツと懐中時計」を読み終えた後も、性懲りもなく続巻を待っていたものです。
この度、ツイッターでの嬉しい発言を知り、喜びのまま思わずこちらに書き込んでしまいました。

ヴィクロテの世界観や登場人物が大好きなことはもとより、その言葉づかい、言葉選び、言葉運びがとても好きで、いつもしあわせな気持ちをいただきました。
(終わり的に、続きが気になって仕方ない巻もありましたが笑)

クリスの言葉で紡がれるヴィクロテの世界が、どのような形であれいつか読めることを心より楽しみにしています。
個人的には、リルちゃんとエドのその後も読めたらな…とこっそり思ったり。

現在、人気作をもっていらっしゃるので、お忙しいかと思いますが、お体には十分ご自愛ください。

乱文にて失礼致しました。

_ 祐子 ― 2018/05/13 22:50

佐原レンリさん、初めまして!

ヴィクロテを読んでいたただいてありがとうございます。ほんと嬉しいです。
ヴィクロテは最初、できるだけ難しい言葉を使わず、読みやすい短い言葉で雰囲気を出すために腐心した覚えがあります。最初の数巻は少しぎこちないですね笑。
リルちゃんとエドはリクエストが多いです。意外とお似合いかもと思っていますが、リルはもてるだろうし、一人娘だからどうかな? シャーリーがキーマンになりそうな気がします。いろいろ約束しちゃってるし。

気長に待っていただけたら幸いです。

_ 未来 ― 2018/06/23 14:25

はじめまして。おそらくこちらへのコメントは初めてだと思います
つい最近またヴィクロテを読み直したのでまさかこちらでクリスの話題が上がっているとは、と感激のままに書き込みをしています。
ヴィクロテ大好きで、特にラストのクリストシャーリーの結婚までのあたりが個人的に何度も読み直しちゃうくらい好きです。
パメラははっきりした子なのでわかりやすいですが、わたしもクリスのことはよくわかっていません
静かな子というイメージです。
コーネリアやアディル、リルちゃんアップル。ヴィクロテの女の子大好きです
アップルのその後を性懲りもなく待っています。もういっそのことオレンジ文庫でヴィクトリアンなイギリス物を書いていただきたいくらいあの年代の話が大好きです

ヴィクロテ、どんな媒体でもいいので待ってます
同人誌も今は電子で発行できる時代ですし、気長に待っています

_ 祐子 ― 2018/06/24 23:16

未来さん、初めまして!

応援ありがとうございます。ヴィクロテはとても大切な作品なので、たまにぽろっとTwitterでつぶやいたりしてしまうのですが、けっこう反応があって嬉しかったです。
クリスは、ずっとつきあっているけど、どうにもわからない場所がある友達といった感じです。多分パメラにとってもそうだと思います。彼女が城へ行ったあたりで、もっとしっかり描いてやるべきだったなあと思ったりします。
ヴィクロテの女の子は私もみんな大好きです。オレンジ文庫でヴィクトリア朝の話、というのもちょっとやりたいですね。どんな形になるかはわかりませんが。
何かあったらここで告知します。待って頂けたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

_ まい ― 2018/07/24 19:24

 私もヴィクロテのお話を楽しみにしています。心の奥にほんのりと残る話で、私は文庫未収録の話も、遅くなりましたが、これから集めようと思っております。
お話をのんびりと待っております。
 私はシャーリーとクリスの話も好きですが、個人的にはビアードとコーネリアの組み合わせも好きです。今は、クリス達の子供の話を1人で妄想しています。
 最近は暑いので、佑子さまもご自愛くださいませ。

_ 祐子 ― 2018/07/26 10:36

まいさん、こんにちは!

ありがとうございます。ビア―ドとコーネリアは一本、ちゃんと書きたい話のひとつでもあります。確か文庫未収録が一本あります。ビア―ドは人の痛みのわかるいい男なんですよ。
ほんと今年の夏は参りますね。まいさんもお体気をつけられますように。

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2002年、「ぼくのズーマー」で集英社ノベル大賞受賞。
現在は、集英社オレンジ文庫、集英社文庫を中心に書いています。
公益社団法人 日本文藝家協会会員。

◆コバルト文庫「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」(略称ヴィクロテ)全29巻完結。
◆ヴィクロテは、読売新聞社主催の「SUGOI JAPAN AWARD2015」ライトノベル部門において、ベスト50に選出されました。

◆「嘘つき女さくらちゃんの告白」が、2017年本の雑誌、オリジナル文庫大賞の、最終選考6作に選ばれました。

◆「これは経費で落ちません!」2019年7月よりNHKドラマ10にて、ドラマ放映。全10回。主演:多部未華子、重岡大毅 (敬称略)

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